まつむし音楽堂通信

 2014年 晩秋号

 

●カラオケが流行りはじめた1980年代はじめ、北新地の酒場では「銀座の恋の物語」をデュエットで唄うのが定番でした。海外では「雪の降る町を」がよく歌われたとか。平坦なリズムで音域がせまく歌いやすかったのでしょう。

●東北大震災以降、演奏会の最後によく歌われるのが「ふるさと」。曲は三拍子で書かれていますが、一音ずつ韻をふむように歌うのが一般的です。和歌の伝統もあるのでしょうか。歌が終わるとしばらく「余韻」が残ります。

●洋楽は「拍」で動いていきますが、邦楽はけっこう自由で、「一拍」ないしは「無拍」の集合体といってもよいでしょう。息の「ツメ」と「ヒラキ」によって「間(ま)」のとり方がきまってくるのです。

●時空自在の邦楽の伝統は、50年代を風靡したいわゆる現代音楽、「ミュジック・コンクレート」の流れと同調するものがあります。明治時代、「唱歌」となる素材を欧米の民謡や楽曲に求めたのと同様、邦楽が洋楽に採り入れられたというわけです。

●まず「旋律」ありきというのが現在のポップス界ですが、定型のリズムに乗ってはいても言葉の羅列だけといった曲が少なくありません。内なる声を旋律に響かせようとする昭和歌謡は「作詞」が優先でした。心に訴える「詞(ことば)」と、それを乗せる「旋律」の配分の妙。これが、美味いカクテルづくりの決め手になるのですが―。

(和田高幸)

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