まつむし音楽堂通信

 2016年 春号

 

●関西では、3月になっても寒い日が続くと「お水取りが済むまでは・・」といった挨拶が交わされるのが習わしです。東大寺二月堂の「修二会(しゅにえ)」(3月1日~14日)、いわゆる「お水取り」は火と水の法会(ほうえ)。満行する13日夜には籠松明11本が登場し、連行衆と呼ばれる僧侶11人が最後の行を勤めます。

●東大寺と水脈でつながるとされる神宮寺(福井県)の「お水送り」も主役は松明の火。仏教の寺とはいえ「拝火教」(ゾロアスター教)の名残でしょうか。むかし小浜出身の知人が「うちの宗旨は仏教伝来以前のゾロアスター教」と話していたのを思い出しました。

●むかし「マツダ電球」というのがありましたが、ドイツではマツダの車がよく売れるそうです。火の神様「アフラ・マヅダ」の連想にあやかっているのでしょうか。「アフラ」はもちろんアブラ(油)です。そのむかし、「火の元」が、海を越えて「日ノ本」へやってきたのでしょうね。

●ところで、私の恩師の一人が「父の郷里は東北で、古い家はロシア正教が多かった」と語っていましたっけ。青森には「キリスト」や「モーゼ」の墓所もあるそうです。日本列島には、古くから八百万の神々が同居したようですが、けっこうインターナショナルだったのですね。

●世界最古の預言者といわれるゾロアスター(ツァラトゥストラ)は、ニーチェの哲学書(「ツァラトゥストラはかく語りき」)のみならずシュトラウスの音楽やモーツァルトの歌劇(「魔笛」におけるザラストロ)にも登場します。最初は悪人として登場するザラストロは実は大祭司でした。

●修二会後半の本尊(絶対秘仏)となる十一面観音像を拝むことはできませんが、「なむかん(南無観)なむかん・・」と観音をたたえる声明(しょうみょう)、法螺貝、体を擲つ荒行など、さまざまな音に満ちた二月堂の法会は、ひたすら「聴聞(ちょうもん)」すべきものかもしれません。春の足音も、すぐそこに―。

(和田高幸)

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