まつむし音楽堂通信

 2020年 秋号

 

●早朝、ラジオでだれかが喋っていました。人生はコンテクスト(脈絡)を辿る旅、人それぞれのストーリーが人生を完成させているのだ、と。いわゆる「終活(しゅうかつ)」の一環ですが、古い名刺や書簡類を整理していたら、わたしにもコンテクストらしきものが見えてきました。

●私事、二十歳ごろの『夢』を辿ると、わたしには「フルート」と「英文タイプライター」を携えて世界を巡るという願望があったようです。結果としては豪州へ留学、帰国して新聞記者となり、かたわら音楽家という漠然とした願望が叶ったといえるかもしれません。

●振り返ってみると、二十歳のときに「処女航海」(十代の作品集)を自費出版しました。半世紀ほど前のことで、自費出版がまだ珍しい時代でしたが、専門の書店で扱っていただきわずかながら小切手を手にしたことを覚えています。この本を読み返すと、わたしの人生のコンテクストが「海」であることがわかりました。

●仕事も、趣味も、「水の都」大阪でなければならなかったわけですね。学生時代のアルバイト先(東京)、新聞社(大阪)への入社、定年後の自営業見習い先もすべて「海軍兵学校」75期生のお世話になったというのも不思議なことです。1995年、「大阪湾岸」に建設されたWTCビル(現府庁第二庁舎)での写真展、「大阪市立なにわの海の時空館」(閉館)でのコンサートに携わったことなども思い出されます。

●コロナ禍の影響によりデジタル化推進など大きな転換期となる今年、大阪も大きな変化を余儀なくされるでしょうね。高齢化と人口減、若い世代の台頭と労働力の国境なき移動、気象異変・・といろいろありますが、とにかく前向きに生きてゆくしかありません。コンテクストを辿れば、「水の都」大阪の復興が、ストーリーの完成となればいいのですが―。

(和田高幸)

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